覚えておおき

海藻、地衣、コケ、キノコ、カビなどの原始的な植物は、
柔細胞のみで構成されている。

しかもその細胞の数も、ごく少なかったり、
あるいはたった1個だったりするのだが、
それにもかかわらず、これらの生き物は、計り知れないほどの
重要な役割を果たしているのだ。

たとえば、岩を粉々にして、植物性の土壌を作る。
あるいは、死骸にはびこり、腐敗物を浄化する。

ものすごい勢いで繁殖しながら、死体を解体し、
それがふたたび生命のサイクルに取り入れられるよう、最も適した状態にする。

覚えておおき。

生物界の調和を保つためには、数日の命しかないカビが、
幾世紀もの寿命を誇るナの木よりも、重要な存在となる。
こう断言しても、けっして逆説にはならない。
なぜなら、柔細胞だけでできたか弱い構造の植物、
汚いゴミの中で生息するこの原始的な植物がいなかったならば、
死の作業はまっとうされず、生命が生まれることなどおよそ不可能になるからだ。　＜ファーブル